BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

レールガンの勝算

試験艦あすかでの実射試験

 

試験管あすかに搭載されたレールガンは従来公開された試作機とは別物とのことだ。

試作品の初速は2,297m/s、戦車砲1,750m/sより31%速い。極超音速誘導弾はマッハ5、約1,700m/sなので、誘導弾の回避行動に対して、速い分だけ迎撃可能となる空間範囲が広がる。世界初となる洋上試験では揺れや海風など環境による影響を確認したと思われる。

 

砲身の耐久性は着々と上がっており、今後は連射の為のパワーユニットの開発を進める事になる。解決策としては、

 ・ストロボ回路のような高電圧チャージ

 ・急速充電、放電のキャパシタ

のような日本が得意とするパワー系半導体、電源回路の民生技術が活かされる事になるだろう。発射待ちの状態では、電源からの経路は、一般的な交流送電線と同じく、高電圧であれば流す電流は少なく済み、その分送電ケーブルの抵抗値は高くてもいいので、結果ケーブルは細く出来る。発射段階では、高電圧から一気に電流を流すので、それをバッファする充電、放電用のキャパシタが必要になるはずだ。

 

自分が担当ならば、発射用の電源+キャパシタリボルバー式に並べ、中心に設置した予備充電用回路から順次充電する仕組みを考える。やり方はいくらでもあると思うので、最適なモノを選ぶのだろう。

 

2023年以降、160憶円で4~5年の開発を実施するので、2030年には量産試作機が登場しているかもしれない。

 

xtech.nikkei.com

 

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https://pbs.twimg.com/media/F9pli__aAAADMiR?format=jpg&name=large

 

過去の経緯

 

 (参考資料① 抜粋)

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本研究試作は、従来の装備品等では対処が困難な極超音速誘導弾等に対する防空手段や、艦艇または地上目標に対して回避が困難な打撃を遠距離から与える手段となるレールガンを構想し、高初速で弾丸を連射可能な将来レールガンに関する研究を行い、早期実用化に向けて技術的成立性を確認することを目的としている。本研究試作を履行するためには、「火砲システムの動的威力(その1)の研究試作」(平成25年度契約)及び「火砲システムの動的威力(その2)の研究試作」(平成27年度契約)の成果物である「射撃性能解析プログラム」並びに「電磁加速システムの研究試作」(平成28年度契約)の細部設計に関する知見を有するとともに、「特許第4931946 電磁レールガン(砲口短絡器)」及び「特許第5328628号 電磁レールガン(絶縁レールガイド)」を使用する必要がある。業態調査の実施時点において、当該研究試作に必要な技術及び設備を有し、特許を使用できるのは株式会社日本製鋼所のみであり、また、公募の結果においても、応募者は株式会社日本製鋼所1社のみであったことから、株式会社日本製鋼所随意契約をするものである。

 

↑ 予算65億円。

 

本委託研究は、将来のレールガンに必要な電源系統の高密度化・高効率化を実現するため、高エネルギー対応素子・回路に係る研究を行うとともに、他の高エネルギー兵器等への波及効果についても検討することを目的としている。 本委託研究を履行するにあたり、基本設計のために「電磁加速システムの研究試作」の細部の設計に関する知見及び仮作試験の考察のために「レールガン電源用数値モデル作成及び解析作業数値モデル」の取扱いに関する知識が必要であるとともに、「特許第5106560号 電磁レールガン」を使用する必要がある。 業態調査の実施時点において、当該委託研究に必要な技術及び設備を有し、特許を使用できるのは株式会社日本製鋼所のみであり、また、公募の結果においても、応募者は株式会社日本製鋼所1社のみであったことから、株式会社日本製鋼所随意契約をするものである。

 

↑ 他の高エネルギー兵器 は、 レーザを想定していると推定。予算37億円。

 

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米軍はデメリットのが多いとの判定で事実上の凍結。ただし、技術が追いついてくれば、すぐに再開出来るよう文書管理を求めている。この辺りが技術開発における米国の厚さ・強さでもある。

 

日本は色々言われているが、開発を進めるとのこと。勝算があると判断しているようだ。他国より優れているとしているのは、

 

 ・電源電池の高密度化

 ・パワーデバイスの高電圧化

 ・エロージョン低減による砲身の長寿命化(現時点で米軍の約10倍,120発)

 

電源系の技術優位は潜水艦のリチウム電池搭載実現で、ある程度は証明されている。

また、ハイブリット技術に代表されるように民生分野での開発が先行している為、このまま推移すれば、将来に渡り技術優位が保てるとも考えているようだ。あまり報道されないが、瞬間的に放電可能な大容量キャパシタと、関連する充放電制御は他国にないレベルに到達しているとの見解を聞く。日本は伝統的に電源周りに強みがあるので、あり得る話ではある。

 

当面はミサイルと組み合わせてのCIWS的な用途を想定しており、将来的には、対艦兵器としても活用したいようだが、実現は相当先になるだろう。

 

たまには、あっと言わせてほしいものだ。

 

参考文献

https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/2021/pdf/jizen_04_honbun.pdf

 

参考資料①

https://www.mod.go.jp/atla/souhon/supply/jisseki/rakusatu/xls/04zuikei_kijunijo.xlsx