人が死んでる!
小学生の頃、田舎だったので、朝は集団登校だった。
寒い日だった。
通学路でない抜け道を歩いていると、
草むらにエンジンがかかったままの車が止まっていた。
誰かが叫ぶ『人が死んでるよ!』
全員でダッシュして現場に急行した。
運転席を倒して、男性が上を向いて眠ったまま死んでいた。
体の上に手を組んだまま。
顔にはまだ生気がある。死にたてのホカホカだ。
強烈な違和感。
目立つ黄色のテープで、きっちりと窓ガラスがマスキングされており、それは、ただ適当に貼ったのでなく、角を各々カットして、きれいな台形になっていた。
マフラーに接続したホースは車内に引き込まれ、丁度顔の上から排ガスが当たるよう、セッティングされていた。その丁寧な仕事ぶりに違和感を感じたのだ。
しばらくして、おまわりさんがやって来た。
『君たち、早く学校に行きなさい』
私は我慢できずに、お巡りさんに聞いたのです。
『ねえねえ、お巡りさん、実弾何発入ってるの?』
『機密事項で答えられない』
チッ。
歩きながら感じた。本当に死にたいのなら、山奥で勝手に死ねば良いはず。
人通りがある道路脇の草むらで、目立つ黄色のテープを使って。
恐らくあの男性は真面目で几帳面な方だったのだろう。
この世での最後の仕事が、自分が死ぬ準備。どんな思いだったのだろうか。
死んだら、見つけてほしい、供養してほしいと思っていたのだろうか。
そもそも、本当は誰かに助けてほしいと願っていたのでは。
もっと、生きたかったのでは。
今でもあの時を思い出す事がある。