アニサキスの恐怖
アニサキスはサバでの中毒が有名です。九州では生サバが食べられますが、居酒屋のメニューにも普通にあり、他地域の方々から非常に驚かれます。
生サバを食べる文化が存在するには理由があります。
日本近海には約9種のアニサキスが居ると言われており、特に多いのが、ピグレフィー型、シンプレックス型です。この2種の大きな違いがあり、それが『移行率』と呼ばれる数字です。移行率とは、アニサキスが内臓から肉に移動する確率を意味しています。
【移行率の違い】※
ピグレフィー型 0.1%
シンプレックス型 11%
※当時読んだ文献の数字。参考リンク先とは出所が違う為、数字が異なっている。
アニサキスの型により、確率が110倍も違います。生サバを食べた時に、運悪くアニサキスを食べてしまう確率が110倍違うという事になります。
これは1,000匹の生サバを食べたとすると、アニサキスを食べてしまうのは、
ピグレフィー型 1匹
シンプレックス型 110匹
という意味でもあります。ピグレフィー型は、アニサキスを食べる確率が非常に少ないのです。ただしゼロではありませんが。
九州全域は日本で唯一、ピグレフィー型の割合が100%となっている地域です。九州で生サバが食べられているのはこの為です。
九州を出て、日本海側を隣の山口に行くと、
ピグレフィー型 80%
シンプレックス型 20%
と、ピグレフィー型の割合が下がり始めます。北上するごとに割合の変化が顕著となり、青森まで行くと、シンプレックス型 がほぼ100%となります。
九州を出て、太平洋側を隣の四国に行くと、
ピグレフィー型 60%
シンプレックス型 40%
と、ピグレフィー型の割合の下がり方の変化がより大きくなります。
生サバ料理で、しめ鯖や炙りが多いのは、アニサキスを殺す為だとされていますが、塩や酢ではアニサキスは、その多くが24時間以内に死なない事が知られています。一方、温度70度以上になると即死、冷凍24時間でも死にます。
アニサキスは皮の裏側に居ることも多く、料亭によっては表面だけを凍結する手法が使われる事もあります。サバ料理で用いられる一般的な『飾り包丁』は、アニサキスを切断する為でもありますが、聞こえが悪いので、隠語として『飾り包丁』としています。(諸説あります)
生サバ以外でも自作したスルメイカの塩辛でアニサキス中毒を起こすこともあります。生イカも表面に細かく包丁を入れますが、これもアニサキスを切断する為です。(諸説あります)。経験上、イカの種類によってもアニサキスが入っている割合が異なり、ヤリイカやアオリイカは、スルメイカに比べると、アニサキスが少ないです。
参考リンク
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/P1-6_1.pdf
(抜粋)
2011 年から 2015 年までの都内アニサキスによる有症事例において、患者から摘出された虫体の96%が A. simplex、2.4%が A. pegreffii と同定され、原因寄生虫のほとんどが A. simplex によるものであった。