友の声が聞こえるか
黒い影の悪霊は、長い腕を振り回している。
タコの足のようだが、吸盤がトゲの様な形状。当たると痛そう、実際痛いし。
刀を握る腕に意識を集中して、ギターを持つ手はサブ扱いに変更した。
刀のつばから青白い炎が立ち上る。
子供の頃、風呂で渦巻を作って遊んでいたのを思い出した。
刀を振ってみる。
海底の砂が巻き上げられ、竜巻のように回転しながら、黒い影に進んでいった。
力いっぱい刀を振ると、竜巻が大きくなり、回転も強くなる。
竜巻を覚えた~♪ (チャララ チャ チャラ~)
解説音がする。ドラクエかよ。
竜巻を放ちながら黒い影の周りを走っているが、どうやって彼女を助けるのだろうか。
悲しみはとても深く、かける言葉が見つからない。
『成仏前に付き合ってください(キリッ』
逮捕だろ、JK。
竜巻で攻撃は防御出来ているが、近づくにつれ、受ける衝撃が大きくなっていく。
『友の声が聞こえないのか!』
無意識に叫んでいた。
『友の声が聞こえるか!』
黒い影の中に彼女の姿が浮かび上がり始める。
走りながら一気に間合いを詰めて、削り出すが如く、彼女を覆う黒い影を切り刻んだ。
影は砕け散り、砂の上に彼女は仰向けに倒れる。
戦闘曲は止まった。自分も人の姿に戻っていた。
キョトンとした表情で彼女は砂の上に座り込んでいる。
当たりを見まわしながら立ち上げると、制服のスカートをパンパンとはたいて砂を落としながら、手を上げて、
『ばいばい』
背を向けて走り始めると、閃光とともに消えた。
『軽いなJK』
2012年のことだった。