BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

SH-60K 着艦支援SLAS非搭載が事故の遠因か

SLAS Ship Landing Assist System

 

今回の事故について、NHKは以下の通り報道している。

 

(リンク先抜粋)

暗視ゴーグルを装着すると護衛艦での発着が難しくなるなどとして、今回墜落した機体も含めて暗視ゴーグルは装着していなかったということです。

海上自衛隊ヘリコプター2機墜落 1人死亡 7人行方不明 木原防衛相“衝突した可能性高い” | NHK | 防衛省・自衛隊

 

これに限らず、自衛隊は裸眼(原則サングラスも使用禁止)による目視確認、各種アシスト装置を出来るだけ使わない人力訓練を重視している。管制塔が破壊された場合など、有事の際でも作戦を実行する為と言われるとそうかと思うが、程度問題もあると思う。米軍は、空母の着艦訓練ではアシスト装置無しの訓練を廃止しつつある。アシスト装置の信頼性が高い事、それを使わない訓練は非常に時間もかかり、かつ、危険なこと、空母の稼働率が落ちる事、などが挙げられている。

 

www.youtube.com

 

DDHは甲板が広いため、SLASは不要だとされている。今回、事故に遭った2機は、夜間にDDから発進している。DDは甲板が狭い為、離着艦とも難易度が高く、過去に事故も起きている。DDあきづき型から、SLAS搭載が検討されていたが、予算上の制約で非搭載となったとされている。SH-60K試作機においてSLAS試験が実施されたが、後の量産機がどうなっているか不明。恐らく未搭載のままではないだろうか。もしSLASが搭載されていれば、暗視ゴーグルを使った哨戒訓練が出来た可能性もある。

SLASの概要(出典:三菱重工 リンク先)

https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/425/425208.pdf

 

事故調査はこれからだが、背景にあるのは、慢性的な人員不足、結果として訓練不足が原因の可能性が高いと考えている。任務に忙殺されて、訓練のリソースが確保出来ておらず、未慣熟状態でも安全な訓練を実施する為の支援装置、支援装備の導入が後回しになっているのではと推察する。そこには冒頭述べたように、時代の流れをある意味無視した、伝統という名の前例主義がまかり通っているとしたら、組織の体質に問題があり、上層部の怠慢だと言わざる得ない。

 

陸自ヘリの事故は上層部の視察中、今回のSH-60Kは夜中における訓練の様子を司令部が評価する『訓練査閲』中だった。言葉が悪いが通常の訓練というより、上層部相手のイベントの意味合いが強い。「僚機間リンク」を動作させてなかったとの事だが、このシステムは基本、各ヘリから護衛艦に位置情報を渡して、その情報をお互いに共有するはずなので、動作異常ならば護衛艦側ですぐに気付いたはずだ。前述した通り、イベントでの見せ場、練度を演出する為に意図的に動作させなかった可能性がある。

 

対応する隊員は経験豊かな選抜メンバだろうが、準備も含めて、本番はいつもと違った失敗が許されない雰囲気で大きなプレッシャーがあったのではないだろうか。

どちらの事故も、結果、疲労も含めて単純な判断ミスを誘発してしまったのでは、と感じてしまう。

 

陸自ヘリが海上で墜落した際には、海上を飛行するにも関わらず、フライトレコーダが機外に取り付けられてない、着水を検知して作動するビーコンもなかった。

 

装備の件は事故と直接関係ないが、精神論を振りかざすだけの組織上層部は、自分達の安全意識の低さについて、改めて考え直すべきだろう。