BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

対魚雷用魚雷ATT

12式魚雷(魚雷防御機能等付与型)の開発

 

相手潜水艦が発射した魚雷を迎撃する魚雷、対魚雷用魚雷は、ATT、Anti-Torpedo Torpedoと呼ばれる。

 

技術面からはソフトキルとハードキルに分別される。日本ではあきづき型の計画時に、ソフトキルである『魚雷防御システム』搭載が、直前に公表された。

 

魚雷防御システムは下図にあるように、ジャマーで妨害しつつ、囮となる自走式デコイで欺瞞する。技術の詳細は伏せられているが、それなりの効果が期待されているのだと推察する。

 

出典:防衛省 リンク①

魚雷は高性能化が進んでおり、例えばロシアの魚雷は航跡を追尾するタイプも存在する為、ソフトキルの効果が低いとされていた。この場合、ハードキルが有効とされるが、ハードキルは課題が多く、過去にも多くの研究開発が行われているが実用化には至ってない例がほとんどだ。ドイツのシースパイダーは実用領域であるとメーカは主張している。

 

30年前には、迎撃魚雷に爆雷付きの網を格納、敵の魚雷に接近、フェアリングを解放、魚雷を網で絡めとり、爆雷で爆発して処分する、というアイデアが検討されていた事もあり、そんなバカなという話もあったが、特許が出ていたと記憶している(登録されたか不明)。

 

ハードキルの場合、そもそも敵は長魚雷であり、接近時には速力も最高速度になっており、容積が大きいので搭載する電子機器やバッテリにも余裕がある。対して、短魚雷は速力は相対的に低く、容積も小さく電子機器やバッテリの制限がある為、圧倒的に不利となる。

 

『12式魚雷(魚雷防御機能等付与型)の開発』においては、迎撃魚雷だけを開発するのではなく、そこに至るまでの探知技術も技術課題としている。

 

(リンク①抜粋)

ア 水上艦ソーナーの探知技術の確立 自艦に近接する彼長魚雷をより早期に探知するための信号処理技術を確立する。

イ 調定技術の確立 水上艦ソーナーが探知した彼長魚雷の情報に基づき、12式魚雷の調定を発射までの間に逐次更新する技術を確立する。

ウ 誘導制御技術の確立 12式魚雷が彼長魚雷を探知、近接する技術を確立する。

エ 撃破技術の確立 彼長魚雷に近接した12式魚雷により、彼長魚雷を無力化する技術を確立する。

 

まとめると、自艦ソナー等で相手魚雷を探知、進行方向を予測、迎撃位置をリアルタイムにATTに伝達する。発射されたATTは相手魚雷を探知するが、この際に自艦からネットワーク誘導されるかもしれない。後、相手付近で爆発、無効化する。シースパイダーも魚雷単独で機能するわけでなく、自艦のアクティブ・パッシブソナーによる探知、信号処理との組み合わせとなっている。

 

12式魚雷は97式魚雷から探知、運動性能とも性能向上が図られ、かつモジュール交換可能なので、ATT化する際に推進部はそのまま、誘導モジュールのみの交換で、どの程度の成果が出せるのかを確認する事になる。

 

リンク①

https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_16_honbun.pdf