BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

F-35B TR-3 納入遅延

F-35シリーズはステルス形状が最も特徴的であるが、機能面では過去最大のソースコードにより構成されている。これは、アジャイル開発による定期的なバージョンUPを可能とする為であるが、同時に非常に複雑なインテグレーションが必要となる。今現在、最新版ソフトF-35 TR-3の実装に遅れが発生しており、防衛省はF-35B TR-3の納入が2025年度以降になると発表している。

 

遅れている原因は、最新版F-35 TR-3(Technology Refresh 3)は次期ハードウエア構成となるF-35 Block4を前提としたソフト実装を目指していたのに関わらず、そのF-35 Block4ハードウエア構成要素が二転三転することとなり、結果、F-35 TR-3のソフト実装が出来なくなっている事による。

 

F-35 Block4には、世界最先端の完全統合型電子戦 (EW) および対抗手段技術である AN/ASQ-239 システムが搭載される。

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https://www.baesystems.com/en-us/product/an-asq-239-f-35-ew-countermeasure-system

 

このAN/ASQ-239は、戦闘機周囲 360 度を球面のごとく電磁信号を検出可能であり、パッシブ型であり自身からレーダを起動しない。機能実現の為、戦闘機には「スターリング」センサー( “staring” sensors )が全体に埋め込まれている。目に見えない電磁信号を即座に検出、リアルタイムに可視化する。その際には、周辺映像に上書きされてパイロットに提供される。

 

AN/ASQ-239は、F-35 TR-3が完全に適用された機体でしか動作しない。これはTR3で組み込まれる予定の最新プロセッサーによる膨大な演算処理が必須の為だ。結果、鶏が先か、卵が先か、という状態に陥っている可能性がある。2025年春ごろに、改めてBlock4のあるべき姿について再定義するという。

 

現在、工場には在庫が積み上がり、各国の導入計画にも支障が出ているため、とりあえず、訓練モードだけ完全実証した暫定版での納入の準備が進んでいるとされている。TR-3はまだ完成しておらず、完成した後、在庫品のアップグレードに1年かかる可能性があると、米国の会計検査院が指摘している。

 

日本が導入予定のF-35B TR-3は、空母化されるかが・いずも、で運用するが、ここで問題になるのは、適合試験だ。暫定版のF-35Bを受け取り、各種試験を実施しても、完全版のF-35BにソフトバージョンUPした後、また試験をやり直す必要がある。

 

日本が空母を持つのは約70年ぶりなので、試験段階から細心の注意が必要となっている。

 

離発着訓練は、やがて馬毛島でも実施されるが、工期は大幅にずれ込み、完成は計画から3年遅れの2030年(令和12年)であり、それまではかが・いずも、でしか訓練出来ない。

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適合試験は、ソフト更新だけでも大変な手間だが、ハード構成が変わると、一からやり直しになりかねない。

 

前述したAN/ASQ-239はF-35 Block4の目玉装備でもあるが、電波情報が映像に上書きされてパイロットに提供される為、離発着時の手順にも影響を与える可能性がある。

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