幽霊が登場するのはやっぱり夏
彼女が現れるようになって6年近くが経過していた。
18歳になったある日、これまた、夏のある日のことだった。
やっぱりこの手の話が、ほぼ夏なのは、人間の五感がエラーを起こし易いから
なのだろう。
ほぼ無理だけど、音楽の道に進むか、諦めて受験するのか、自分の中で葛藤があった。
『おーい幽霊出てこいや』
ロック調でシャウトしてみた。
その日の夜、階段を上ってくる音が聞こえてきた。
ミシ・・・・・・メリッ・・・・・・・・
母親が夜食持って来てくれたんだな、そう思いながら教科書を読んでいると、
メリッ・・・・・・・・・・・・・・ミシッ・・・・・・・・・・・・・・
遅すぎる。熱の膨張収縮で、木製の階段から、音がしているのだろうか。
無意識のうちに音の回数を数えていた。12回で止まった。
丁度2階に上がりきったとこだ。ドアの向こうに気配を感じてしまう。
怪談話に出てくる動物はいつも猫
少し考えて、2階から脱出する事にした。さてっと、
キィ キィイー
背後の網戸が開き始めた。詰んでいる状況ってやつですか。
血まみれの誰かが鬼の形相で迫ってくる、かもしれないとビビりながら振り向いた。
網戸を開けたのは野良猫だった。ドアの向こうをジッと見つめている。
『どうすれば良いと思う?』
声をかけられた猫は、ハッと我に返り、
『知らんがな』
といった素振りで、ダッシュで行ってしまった。
日常に潜む女の恨みは恐ろしい
網戸を閉めながら、そうだ寝るか。寝れば解決。簡単じゃないか。
そうして電気を消して寝る事にした。
おやすみ。しばらくすると、夢の中で2つの手が首を絞め始める。
イヤイヤちょっと・・・・
苦しい?・・・・いや、マジで苦しい!・・・やめろ!やめてくれ!!!
飛び起きた。
ガシャ、ガガガガガガ
機械音が部屋に響く。
目が覚めてきて、部屋の電気を付けると、機械式の扇風機が倒れていた。
自分の首を1周した電源コードが、飛び起きた時に扇風機を倒したみたいだ。
本当に首が締まっていた。
出てこい言ったから出てきたのに。何、寝てるんだよ。
とでも言いたかったのだろうか。