推進タンクのゴム膜が弁を塞いだ?
イプシロン6号機は強化型とされており、パイロ弁と推進タンクの仕様が変更されている。パイロ弁内イニシエータは2系統で冗長化されており、どちらかが作動すれば正常系として動作する。よって、この部分の単発不具合の可能性は低いと思う。ただし、どちらかが正常動作しても、配管側の仕切りは1つなので、ここで開閉に不具合があれば、異常となる。
もう1つ変更された推進タンク。
調査中だが、推進タンク内のゴム膜が、推進薬の流れや振動で、配管を塞いだ可能性がある。例えば、パイロ弁内の仕切りが正常に閉じず(閉じるのが遅れ)に、推進薬が想定以上に流れてしまい、ゴム膜が想定以上に引っ張られ、配管を塞いだ、というシナリオだ。細かい事は不明だが、これが不具合の事象だと思う。
不具合事象を引き起こした原因が加工不良なのか、設計ミスなのか(ミスと呼べない環境要因かもしれない)、評価漏れなのか、調査中だが、H3は元の仕様に戻していると思う。
冗長設計は難しい。
単純に系統を増やせば、部品が増えて故障率は上がる。系統を減らせば、部品の故障率は下がるが、部品故障時の不具合発生率は上がる。不具合発生時に、それがリカバリ不可能なシステム全体の致命傷となるかどうか、不具合発生率も含め、その見極めが難しい。
エンジニアは常に責められる立場
失敗すれば、言い訳が出来ない。部品が正常でも組み合わせで異常となった場合、システム評価の是非が問われる。実機で全パターンの試験は出来ない。設計時におさえる項目と製造時におさえる項目・・・、どう評価して、結果がどの範囲ならば合格とするのか・・等々。
個人を責めるのは違うと思う。
日本では工学部への進学は減り続けており、あえて工学部を選ばず、医学部・薬学部・歯学部に進学する流れが加速している。エンジニアの親が子供に薦めないのも理由だとされている。良くわかるよ。エンジニアは苦労の割に報いられないからね。私の周りでも、『我が子を、日本でサラリーマン技術者にしたい!』と望む親は1人も居ません。
参考①
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/221216-mxt_uchukai01-000026549_1.pdf