BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

もがみ型は艦対空誘導弾を撃てるのか

多機能レーダと艦対空誘導弾

 

『多機能レーダ(新艦対空誘導弾試験用)』(リンク)は2019年に三菱電機と契約されている。試験艦あすかに搭載したレーダだと思われる。

 

リンク

三菱電機株式会社が落札した政府調達案件一覧 - 防衛省の案件

 

1年前の2018年に(リンク消滅)以下が公示されていた。

 

多機能レーダ(新艦対空誘導弾試験用)の製造に係る契約
「多機能レーダ(新艦対空誘導弾試験用)の製造に必要となるライセンス実施権をオランダ国タレス ネーデルランド社から認められていること又は認められる見込みがあることが証明できること。」

 

文中にある、”タレスからのライセンス”はESSM誘導で必要なICWIアルゴリズムを指している。(当時の”新艦対空誘導弾”は以下”A-SAM”)、ここから予想されるのは、

 

 ・もがみ型OPY-2ではA-SAMが誘導出来ない

 ・もがみ型OPY-2ではA-SAMは誘導出来るが、ESSMは誘導出来ない

 

のどちらかとなる。新型FFMでは、ミサイル管制装置が追加されており、現行もがみ型のOPY-2では、そもそもA-SAMが誘導出来ないのでは、との憶測の根拠にもなっている。もがみ型VLSにはアスロックのみが搭載されるとの報道もある。

kaigo-sos.hatenablog.com

 

別の動きを見てみると、むらさめ・たかなみ護衛艦の近代化改修において、レーダの改修が検討されている。

kaigo-sos.hatenablog.com

 

OPY-2はもともとA-SAM運用を前提としていたはずで、A-SAMが誘導出来ないのは、流石にないと思う。ESSMはセミアクティブでICWIが必須だが、A-SAMはアクティブ方式であり、理論上はICWIなしで誘導出来るはずだ。よって、

 

 ・もがみ型OPY-2ではA-SAMは誘導出来るが、ESSMは誘導出来ない

   →政策的にアスロックのみを搭載することにした。

 

 ・新型FFMでは、追加されたミサイル管制装置、OPY-2ともA-SAMは誘導出来るが、   

  ミサイル管制装置でA-SAM誘導。ICWI追加したOPY-2でESSMも誘導出来る。   

 

 ・ICWI追加したOPY-2は、むらさめ・たかなみ護衛艦の近代化改修のレーダ候補

 

前向きに考えるとこうなる。新型FFMでミサイル管制装置が別に追加されたのは、ICWIライセンスと開発の効率化、A-SAMと将来のA-SAM(能力向上型)の搭載を見越しての事だとするわけだ。

 

が、OPY-2は砲の管制、潜望鏡探知、ESも兼ねており、ここにICWIを入れようとすると、それなりに開発工数がかかり、従来技術との併用も難しくなる。

 

結果、OPY-2にICWIを追加する事が出来なかったのでは。さきほどの予想は次のように変わる。

 

 ・もがみ型OPY-2でのA-SAM運用には制限があり、政策的にアスロックのみを搭載することにした。

 

 ・新型FFMでは、ミサイル管制装置にICWI追加、A-SAMとESSMを誘導する。OPY-2はそのまま。ただし、ミサイル管制装置にICWIを搭載せず、ESSM運用しない可能性もある。

 

 ・ICWI追加したミサイル管制装置は、むらさめ・たかなみ護衛艦の近代化改修のレーダ候補。ただし、検討した結果、不採用となる可能性もある。その場合、FCS-2によるESSM運用を継続。

 

長々と書いてしまったが、ESSM運用も出来るICWI追加は開発のみ、または検討のみが行われ、実際には採用されないと思う。むらさめ・たかなみ護衛艦の近代化改修において、対空レーダ改修は行われない。

 

多機能レーダ(新艦対空誘導弾試験用)が2019年に契約されたのは、試験艦あすか搭載の為であり、これがOPY-2そのままなのか、新型FFMで追加されたミサイル管制装置なのか不明だが、後者の可能性が高い。

 

結論として、もがみ型は残念ながら、いつも通りの発展性のないガラパゴス仕様だったという事になる。オーストラリア海軍の候補になっているとの報道もあるが、そのままでは、A-SAM運用に制限があり、かつグローバルスタンダードなESSMも使えない、ではとても採用されないだろう。