最後に残った松の木が
雨が降る暗い道を歩いていた。
道端の祠(ほこら)の軒先(のきさき)に、赤い柄が特徴的な着物姿の小さな女の子が腰かけていた。手にした松の枝を差し出しながら、話し始める。
『ここにはたくさんの松の木がありました。残ったのはあの1本だけです』
彼女が指差す方向を見ると、確かに山頂にぼろぼろの松の木が1本見えた。
その時、千里眼が起動し始め、生前の幼い彼女を映し出す。汚らしい小屋の中で乱暴され、殺害される映像が流れ始めた。
これは・・・
犯人は冤罪として釈放され、真犯人は捕まっていない。
彼女の無念は如何許(いかばかり)、だろうか。
酷い目に遭った小さな子が、このような薄暗い場所に放置されているのは、なぜなのだろうか。神様や仏様が助けてくれる、そうじゃないのか?そう教えられたぞ。
聞いてる話と違うじゃねえか。
天に向かって吠えていた。