BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

国産レーダFCS-3

世界最先端のレーダになるはずだった

 

FCS-3の当時のウリは以下の通り。

 

・アクティブフェーズドアレイレーダ採用

・Cバンド

・ACDSとの組み合わせでリアクションタイムの大幅な低減

 

Cバンドを選択したのは個艦防御を想定していた為。

米軍のイージスシステムで使用されるSPYレーダはSバンドで遠くまで見えるが解像度は低い。誘導で使用するXバンドは解像度は高いが距離は短い。これは艦隊防御の為、その周波数の組み合わせとなっている。Cバンドは良いとこどりに見える反面、気象条件によっては性能が制限される事があり、その対策も含め、アルゴリズムの追加に時間がかかったと言われているが、企画から正式採用まで30年かかり、出来上がる頃にはハード含めて陳腐化してしまい、時代遅れのレーダになってしまった。

 

採用時には、国産ミサイルは間に合わず、断トツ性能のESSM誘導の為に追加でXバンドレーダ(とタレス社のソフト)を併用する羽目になった。

 

FCS-3は性能的にイージスシステムを上回る場面があると言われるが、それは主にレーダの周波数の違いによる。国産アクティブレーダ素子の出力効率が高いのは事実だろうが、そちらはダウンサイズとか発電効率とかへの寄与のが大きい。

 

後、性能向上の試作を実施(~2015年)、この際に潜水艦の潜望鏡探知技術が追加された。

マルチファンクションレーダ(FCS-3)の性能向上(出典リンク③:防衛省

FFMもがみ型の多機能レーダにつながった

 

微妙なFCS-3ではあるが、周波数をXバンドに変えて、”新型護衛艦用レーダシステムの研究”(リンク②)として開発が進められ、FFMもがみ型では対空レーダ、砲の誘導、潜水艦の潜望鏡探知、電子戦を共用するコンパクトなレーダとなっている。FCS-3のアクティブ素子の技術、アルゴリズム開発の成果が活かされている。FFMもがみ型はステルス形状が特徴的だが、フランスのラファイエット級登場からちょうど30年遅れとなる。ステルス形状が故に、運用上使い難い面もあるらしく、同型を運用するシンガポールからの助言、”対艦ミサイル撃つたびにカッコいい周辺構造物が吹っ飛び、後片付けと修理が大変”とのことで、もがみ型では対艦ミサイルをむき出しに戻したらしい。口コミ情報大事だね。

 

参考① 世界の艦艇2008.3

http://wau.private.coocan.jp/document/hfcs/JMDFCS/jmfrfcs3.pdf

 

参考② 新型護衛艦用レーダシステムの研究

https://www8.cao.go.jp/cstp/budget/yosansenryaku/7kai/siryo10.pdf

 

参考③「マルチファンクションレーダ(FCS-3)の性能向上」 

https://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/FCS-3_25.pdf