BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

US-2 調達終了か

円安、インフレ圧力で調達コスト急騰

 

報道によると円安で装備品の調達コストが軒並み上昇、計画見直しが避けられない状況だ。輸送ヘリCH-47Jは200憶円超えであり、計画費50%削減(34機→17機)見込みとのこと。

 

日本の慣習であるチビチビ調達が完全に裏目に出ている。法改正で防衛装備品は一括契約が可能になっているが、前例主義、事なかれ主義の弊害は変わらないままだ。F-15近代化改修も当時の想定円相場は108円、総額6,465億円と見積もっており、現在の為替レート150円で単純換算しても、約9,000億円となり、今後の資源高分を考慮すると1兆円超えも十分にありえる。古いF-15を1機当たりF-35Aの1.5倍となる150億円で改修することになり、計画破綻はほぼ確実だ。

 

時代に取り残されるUS-2

 

US-2は現在製造中の9909号機以降の生産は危ういと噂されていたが、部品の調達コストが跳ね上がり、1機190億円→24年度300億円→25年度700億円になる見込みという。この価格上昇はサプライヤーの撤退分も含まれていると見られ、24年度の10号機までは一部メーカ撤退対応の単価、25年度の11号機からは、主要メーカ(三菱他)撤退分を自社生産に切り替えた見込み単価ではないだろうか。設備の耐用年数が迫っているのならば、次回調達までに年が空けば10号機の値段もさらに上昇する。これは新造だけでなく、修理時の補給部品の調達にも当てはまるわけで、ダメージが激しいUS-2のまともな運用が出来なくなる恐れがある。

 

もともと、US-2は新明和の仕事を確保する為のプロジェクトであったUS-1A改の改修規模を場当たり的に拡大した結果、全くの別機体へと変貌した経緯がある。

 

US-2の大きな特徴はヘリに比べて長い航続距離とされているが、今はKC-130Hの給油を受けてUH-60Jをより遠方まで飛ばす事も出来る。それでも陸から遠距離、かつ短時間での救助が出来るのはUS-2だけだが、それを維持する為に救助用の専用機材、それを使いこなすクルーにも多くの特殊な訓練が必要となっているのが実情だ。

 

 

今でも最も困難な着水時には職人技という名の属人化された技能が必要となる。US-2はその前身であったPS-1からの伝統である波高3メートル以内での着水がウリであるが、その実態は以下の様に語られている。

 

(抜粋 P42)

着水可能である「波高3メートル」とは、有義波高を示していると述べている。有義波高とは水面の波高の代表値として用いられるものであり、風によって起こされる波はいわゆる不規則波であって、波高や周期には大きなばらつきがあるため、連続した例えば100個の波のうち、高い方から上位3分の1の波高を平均したものを有義波高として使用する。従って「有義波高3メートル」の実際は、最高4メートル、最低2メートル程度のものが含まれた波であり、このような海面で正常な操作を行うためには、パイロットの練度は最高のレベルが要求されると指摘している。

https://www.nids.mod.go.jp/publication/senshi/pdf/202303/03-2.pdf

 

つまり最後はパイロットが連続波が低くなるタイミングを見計らって着水しているわけで、タイミングを外せば4メートル以上の波への着水も容易に起きうる。常に致命的な事故と隣り合わせなのだ。これはPS-1から多数の事故、殉職者を出す原因となっている。

 

加えて、夜間運用が全く出来ないガラパゴス仕様で他国にとって使い難く、三菱、川崎との分担生産(新明和の設計を肩代わりした論功行賞)による慢性的なコスト高という課題を抱えたまま、ずるずると調達してきたが、ついに破綻する事になった。

 

日本ダメポ