BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

US-2 調達終了か

2026年

メーカである新明和の事業計画では(リンクP37、最終ページ)、2030年に防衛部門の売上目標を500憶円としており、うち、US-2関連は150憶円を占める。

https://www.shinmaywa.co.jp/ir/pdf/presentation_25-05-16_script.pdf

 

US-2製造は数年ごとに1機に過ぎず、防衛予算として、製造だけでなく、定期検査にも巨額の費用を計上していることが伺える。

 

メーカでは多角化の一環として、誘導弾の発射装置や兵站車両を手掛けるとしているが、独占状態での高コスト体質が懸念される。

同社の民間の機械式駐車装置事業では、公正取引委員会から、独禁法の排除措置命令および課徴金納付命令を受けている。


2024年の動向 ~苦し紛れのリビルド生産

 

2024年8月8日、US-2救難飛行艇1号機が除籍された。(写真右から2機目)

今後は、整備時の部品取りとして保管される。後述するリビルド品の納品の備えて、疲労部品の破壊検査を実施するかもしれない。結果が良ければ、運用中の機体寿命が延ばされる可能性もあるが、悪ければ、逆にメンテ費用が跳ね上がり、早期退役の可能性もある。

 

『US-2型航空機用途廃止機からの部品取外し役務』が公告されている。

https://www.mod.go.jp/msdf/bukei/zd/nyusatsu/koubo6-5.pdf

https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/276/233/large_240808_us2_014.jpg

「お疲れさま」の声多数! 日の丸飛行艇「US-2」初号機が除籍 当初は全然違うカラーリング(乗りものニュース) - Yahoo!

 

2025年以降、退役する量産機をリビルドして、見た目は新造機として納入を継続するとの報道がある。リビルド機は約300億円とされ、2023年に報道された24年度の新規調達価格300億円より実質高く、25年度700億円の約半分。”防衛生産基盤強化法”に基づいて、他企業所有ラインを国が買い取り新明和に実質移管、新明和が機体(ドンガラ)だけを新造。退役機からエンジン・駆動系・電子機器などを取り外し、使いまわすのかもしれない。

 

しかしながら、中古品は耐久性が落ちているので、除籍機を使った破壊試験の結果が悪ければ、次回までの部品交換間隔は短くなり、結果、ライフサイクルコストは跳ね上がる。機体(ドンガラ)生産と組み立てに300億円もかけて、維持に見えない経費が余分にかかるならば、癒着が疑われてもおかしくない。

 

www.youtube.com

2023年の動向 ~時代に取り残されるUS-2

 

US-2は現在製造中の9909号機以降の生産は危ういと噂されていたが、部品の調達コストが跳ね上がり、1機190億円→24年度300億円→25年度700億円になる見込みという。この価格上昇はサプライヤーの撤退分も含まれていると見られ、24年度の10号機までは一部メーカ撤退対応の単価、25年度の11号機からは、主要メーカ(三菱他)撤退分を自社生産に切り替えた見込み単価ではないだろうか。設備の耐用年数が迫っているのならば、次回調達までに年が空けば10号機の値段もさらに上昇する。これは新造だけでなく、修理時の補給部品の調達にも当てはまるわけで、ダメージが激しいUS-2のまともな運用が出来なくなる恐れがある。

 

もともと、US-2は新明和の仕事を確保する為のプロジェクトであったUS-1A改の改修規模を場当たり的に拡大した結果、全くの別機体へと変貌した経緯がある。

 

US-2の大きな特徴はヘリに比べて長い航続距離とされているが、今はKC-130Hの給油を受けてUH-60Jをより遠方まで飛ばす事も出来る。それでも陸から遠距離、かつ短時間での救助が出来るのはUS-2だけだが、それを維持する為に救助用の専用機材、それを使いこなすクルーにも多くの特殊な訓練が必要となっているのが実情だ。

 

 

今でも最も困難な着水時には職人技という名の属人化された技能が必要となる。US-2はその前身であったPS-1からの伝統である波高3メートル以内での着水がウリであるが、その実態は以下の様に語られている。

 

(抜粋 P42)

着水可能である「波高3メートル」とは、有義波高を示していると述べている。有義波高とは水面の波高の代表値として用いられるものであり、風によって起こされる波はいわゆる不規則波であって、波高や周期には大きなばらつきがあるため、連続した例えば100個の波のうち、高い方から上位3分の1の波高を平均したものを有義波高として使用する。従って「有義波高3メートル」の実際は、最高4メートル、最低2メートル程度のものが含まれた波であり、このような海面で正常な操作を行うためには、パイロットの練度は最高のレベルが要求されると指摘している。

https://www.nids.mod.go.jp/publication/senshi/pdf/202303/03-2.pdf

 

つまり最後はパイロットが連続波が低くなるタイミングを見計らって着水しているわけで、タイミングを外せば4メートル以上の波への着水も容易に起きうる。常に致命的な事故と隣り合わせなのだ。これはPS-1から多数の事故、殉職者を出す原因となっている。

 

加えて、夜間運用が全く出来ないガラパゴス仕様で他国にとって使い難く、三菱、川崎との分担生産(新明和の設計を肩代わりした論功行賞)による慢性的なコスト高という課題を抱えたまま、ずるずると調達してきたが、ついに破綻する事になった。

 

奥の手として、防衛生産基盤強化法による製造ラインの国有化が検討されているという。大物部品だけでなく、サプライチェーン全体がガラパゴス化しており、新明和に金だけ払っても、体制を維持するのは容易ではない。インドへの輸出が不調になった際には、コストダウン機の開発の噂もあったが立ち消えている。新明和はそもそも設計能力が皆無であり、民間機として輸出するにしても、ハードルが高い型式証明が必要で、とても無理。

https://www.mod.go.jp/atla/hourei/hourei_dpb/01_gaiyo_dpb_shisaku_r051213.pdf