水中グライダーSlocum
防衛省はXにて、米国Teledyne Webb Research製の水中グライダーSlocumを導入すると発表した。同時にNEC製の遠距離水中音響通信モジュールも契約するとしている。この2つを組み合わせて使うのか、別々の運用なのか不明。
#海上自衛隊 は海洋観測能力を強化するため、海洋観測用 #UUV (水温構造等観測用Ⅰ型・Ⅱ型)及び遠距離水中音響通信モジュールの供試器材を契約しました。
— 防衛省 海上自衛隊 (@JMSDF_PAO) 2024年2月6日
今後も国民の命と平和な暮らしを守っていくため、 #無人アセット 防衛能力を強化し、 #防衛力の抜本的強化 を進めていきます! pic.twitter.com/pZZ41TSYZM
『水中グライダー』という響きに懐かしさを感じたが、2016年当時、防衛省は『水中滑走制御技術の研究』と題して、エイのような模型を使った研究を実施していた。
Slocumは、内部にある水や油をピストンで前後部に移動させて重心を変化させ、海流を利用しながら、上昇と下降を行う。海面に到達した後、後部のアンテナから衛星通信で運行データを送信する。観測データ自体は本体から取り出す必要がある。
ユニークなのは、動力源としてアルカリ電池、リチウム充電池、リチウム電池が選択可能で、メーカカタログによると、リチウム電池使用時には、航続距離は3000-13000km、航行時間は4-18 monthsにも達するという。重心移動技術が、この長期運用を可能にしていると思われる。
トラブル発生時には、バックアップ電源に繋がれた強制腐食ワイヤーで固定された錘が切り離され、本体が海面に浮上し、SOS電波を発信する仕組み。
Slocumは軍事専用というわけでなく、学術、商業分野でも使用されており、防衛省がエイ模型で実験していた同時期に、気象研究所が『水中グライダーを用いた高解像度海洋観測技術の開発』と題して、Slocumを使って2016年~2018年の期間、小笠原諸島周辺で海洋観測実験を実施している。この際には、”気象庁船による投入・回収時の比較用船舶観測データが非常に重要”とされた。
https://www.mri-jma.go.jp/Topics/H30/kankyosympo2018/files/poster_4.pdf
今回防衛省が導入するのは2機種(Ⅰ型、Ⅱ型)となっているが、オプションセンサの選択の違いだろう。
リンク①
https://www.mod.go.jp/atla/research/dts2013/R4-2.pdf
リンク②