BASI-KRAMER’s blog

浜までは海女も蓑着る時雨かな

防衛省 水中グライダー導入

水中グライダーSlocum

 

防衛省はXにて、米国Teledyne Webb Research製の水中グライダーSlocumを導入すると発表した。同時にNEC製の遠距離水中音響通信モジュールも契約するとしている。この2つを組み合わせて使うのか、別々の運用なのか不明。

 

 

『水中グライダー』という響きに懐かしさを感じたが、2016年当時、防衛省は『水中滑走制御技術の研究』と題して、エイのような模型を使った研究を実施していた。

2016年に試作された水中グライダー(出典:リンク①)

Slocumは、内部にある水や油をピストンで前後部に移動させて重心を変化させ、海流を利用しながら、上昇と下降を行う。海面に到達した後、後部のアンテナから衛星通信で運行データを送信する。観測データ自体は本体から取り出す必要がある。

 

ユニークなのは、動力源としてアルカリ電池、リチウム充電池、リチウム電池が選択可能で、メーカカタログによると、リチウム電池使用時には、航続距離は3000-13000km、航行時間は4-18 monthsにも達するという。重心移動技術が、この長期運用を可能にしていると思われる。

 

トラブル発生時には、バックアップ電源に繋がれた強制腐食ワイヤーで固定された錘が切り離され、本体が海面に浮上し、SOS電波を発信する仕組み。

 

Slocumは軍事専用というわけでなく、学術、商業分野でも使用されており、防衛省がエイ模型で実験していた同時期に、気象研究所が『水中グライダーを用いた高解像度海洋観測技術の開発』と題して、Slocumを使って2016年~2018年の期間、小笠原諸島周辺で海洋観測実験を実施している。この際には、”気象庁船による投入・回収時の比較用船舶観測データが非常に重要”とされた。

https://www.mri-jma.go.jp/Topics/H30/kankyosympo2018/files/poster_4.pdf

 

今回防衛省が導入するのは2機種(Ⅰ型、Ⅱ型)となっているが、オプションセンサの選択の違いだろう。

 

リンク①

https://www.mod.go.jp/atla/research/dts2013/R4-2.pdf

 

リンク②

www.teledynemarine.com

www.seanet.co.jp